希少な骨董品や激レアおもちゃを相続すると価値が下がる意外な理由
法律のプロが教える、相続と遺言の豆知識 第2回
貴重なコレクションでも相続しないほうが得!?
もし親が貴重な骨董品のコレクションを残したとして、これを取得すべきでしょうか。
骨董品の鑑定結果はあくまでも、その額で欲しい人がいた場合に成立する取引価格です。不動産で考えてみても、例えば離島の不動産には買い手がいないので、取引が成立しません。市場価値といってもある意味で期待値であって、その価格での売買が保証されているわけではないのです。
骨董品の価値には、感情や思い入れが大きく影響します。ある人にとって喉から手が出るほど欲しいものでも、別の人は目もくれない。
不動産でも、感情や思い入れで価格が決まることはあります。不整形な土地に建つ自宅の隣地であれば、その土地を高値で購入してでも、自宅の土地を整形地にする必要性が認められます。共稼ぎ夫婦は親に子育て支援を求めて、割高でも実家近くに家を買うことがあります。相場より高くても「その不動産」を買う理由があるからです。「市場価格」ならぬ「私情価格」です。
思い入れが評価額に強く影響し、「私情価格」が付けられる財産は一般的には流動性が低く(※注1)なります。「世界に1つだけ」という、度を超えた希少性は、欲しがる人の母数が減ることで流動性が低くなるのです。換金しようと買い手を探そうと思っても、難しいからです。ゼロ評価またはマイナス評価にすらなってしまいます。
遺産分割における流動性が低い財産は、特に思い入れがあったり、今後も所有し続けたいと思ったりする場合でない限り、取得するべきではありません。
ただし、例外もあり
流動性が低い財産をもらって得をするケースもあります。現金をもらうか株式をもらうかが焦点になる遺産分割の事案。株価が低迷していたため、流動性がより高い現金を多くもらう相続人が、金額の点で妥協をしました。ところが遺産分割の後に政権交代が起こり、株価が急騰。株式をもらった相続人は想定外の値上がり益を手にしました。
遺産分割においては、どの財産をもらうかの目利きが重要になることもあるのです。
もっとも、相続において、骨董品は、よほど価値が高いものでない限り、遺産分割の対象ではなく形見分けとして処理されることも多いようです。形見分けとは死者の所持品を親族などに分けることで、受け取ったものは相続税の対象にはなりません。遺産分割の対象になるものは、一定の価格以上のものに限られるのです。
相続における流動性とは、現金への換えやすさのこと。現金や有価証券は流動性が高い財産といえる。それらに比べて不動産は流動性の低い財産だが、不動産の中でも流動性の高いものと低いものがある。前者は例えば都心の収益物件や駅近のマンション、後者は広大な別荘地や地方の田畑などである。
<『相続の抜け穴 遺言の落とし穴』(長谷川裕雅)より抜粋>
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